
声の仕事に興味はあるけれど、自分にできる気がしない…..
そう感じている方は少なくありません。
声優やナレーターと聞くと、もともと声が良い人、演技が得意な人、人前で話すことに慣れている人だけが目指せる世界のように思えるかもしれません。
しかし、YouVoice Academyを運営する畑耕平さんも、最初から声の仕事を目指していたわけではありませんでした。
今回お届けするのは、YouVoice Academyとshikisaiによるコラボ対談です。
畑さんは、株式会社Adroaigの代表としてナレーター事務所を運営しながら、ご自身もプレイヤーとして声の仕事を続けています。
代表的な仕事の一つが、YouTubeチャンネル「ヒューマンバグ大学」。
そのほかにも、企業VPや各種ナレーションなど、ジャンルを問わず幅広い声の仕事に携わっています。
そして、そうした現場で培ってきた経験をもとに、YouTubeナレーターに特化したスクール「YouVoice Academy」を運営しています。
YouVoice Academyは、声優事務所への所属だけをゴールにするのではなく、声の仕事を取るために必要な考え方やスキルを学べる場所です。

今回の対談では、shikisaiの石塚さんが、畑さんに声の仕事を始めたきっかけや、現在に至るまでの歩みを伺いました。
ただ、畑さんの原点は決して華やかなものではありません。
最初から声優に強い憧れがあったわけでも、人前で話すことが得意だったわけでもありません。
むしろ、声を出すこと自体が少ない時期もあったといいます。
では、畑さんはどのように声の世界へ入り、今の仕事につなげていったのでしょうか。
ここからは、石塚さんと畑さんの対話形式でお届けします。
最初から「声優になりたい」と思っていたわけではない

石塚さん畑さんは、今でこそ声のお仕事をされていますよね。最初から声優やナレーターを目指していたんですか?
畑さんいえ、もともとは声の仕事に全く興味がありませんでした。声優という仕事の存在も、あまり知らなかったんです。
石塚さんそこから声の仕事に進むのは、かなり意外ですね。
畑さんきっかけは弟でした。16歳くらいの時に弟が声優に興味を持って、そこで初めて「アニメって人が声を当てているんだ」と気づきました。
石塚さんその時に、畑さん自身も声優に興味を持ったんですか?
畑さん強い興味があったわけではありません。ただ、進路を考えた時に、周りの人と被らないことをしたいなと思ったんです。
石塚さん周りと違うことをやってみたい、という気持ちだったんですね。
畑さんそうですね。知り合いや親戚に声優をやっている人がいなかったので、「じゃあ声優を目指してみようかな」くらいの感覚でした。
石塚さん最初から大きな夢があったというより、まずはやってみようというスタートだったんですね。
畑さんはい。当時は、声優を目指している人が世の中にたくさんいることも、よく分かっていませんでした。自分の周りにいなかったので、珍しい道に見えていたんだと思います。
人と話すことが得意だったわけでもない

声の仕事と聞くと、「もともと話すのが得意な人が向いている」と思う方もいるかもしれません。
でも、畑さんはそうではありませんでした。
むしろ、人と話す機会が少ない時期を過ごしていたといいます。
石塚さん実際に養成所に入ってみて、どうでしたか?
畑さん僕は中学校時代に登校拒否をしていて、学校にも行っていませんでした。いわゆる引きこもりのような状態だったので、人と喋ることも少なかったんです。
石塚さん声の仕事を目指すうえでは、大きなハードルに感じそうですね。
畑さんそうですね。声を出すこと自体があまりなかったので、最初はかなり厳しかったと思います。
石塚さん養成所では、どんなことが印象に残っていますか?
畑さんレッスンの中で、セリフの取り合いのようなものがありました。やりたいセリフが他の人とかぶったら、2人で読んで、クラスメイトがどちらが良かったか投票するんです。
石塚さんかなりシビアですね。
畑さん結果は全戦全敗でした。ひとつもセリフをもらえず、全員で言うところだけしか言えない状態でした。
初めて「悔しい」と思った
周りはセリフをもらっている。
でも、自分は選ばれない。
しかも、それをクラスメイトの前で見せつけられる。
もし自分が同じ状況だったら、自信をなくしてしまうかもしれません。
畑さんも、この時に強い感情を抱いたといいます。
石塚さん全戦全敗だった時、どう感じましたか?
畑さんたぶん、人生で初めて悔しいと思いました。それまで何かに本気で悔しがる経験があまりなかったんです。
石塚さんそこから何か変わったんですか?
畑さんどうしたらセリフをもらえるのかは分かりませんでした。でも、とにかく練習しました。次のレッスンまでに、何度も何度も原稿を読んだんです。
石塚さんまずは行動量で変えようとしたんですね。
畑さんはい。周りが台本を見ながら読む中で、一番最初に暗記したら目立つかもしれないと思いました。
石塚さんそれを実際に続けていったんですね。
畑さんそうです。一番早く暗記することを積み重ねていくうちに、少しずつ先生にも見てもらえるようになりました。クラスの中でも、役をもらえるようになっていきました。
「才能がない」と決めるのは、まだ早い
石塚さんここまでのお話を聞くと、畑さんも最初から順調だったわけではないんですね。
畑さん全然そうではないですね。最初はセリフも取れませんでしたし、人と話すこと自体も多くありませんでした。
石塚さん声の仕事に興味がある方の中には、「自分は才能がないかも」と思っている方も多いと思います。
畑さんそう思う気持ちは分かります。ただ、最初の時点で才能があるかどうかを決めるのは、早いのではないかなと思います。
石塚さん最初からできるかどうかよりも、そこからどう変わっていくかが大事ということですね。
畑さんそうですね。僕自身も、どうしたらセリフをもらえるのか分からない中で、とにかく原稿を読んで、まずは一番早く暗記しようと考えました。
石塚さん技術だけではなく、見てもらうための工夫もしていたんですね。
畑さんはい。最初からうまくできたわけではありません。でも、少しずつ練習して、少しずつ見てもらえるようになっていきました。
石塚さん「今できない」ことと、「これからもできない」ことは違うということですね。
畑さんまさにそうだと思います。もちろん簡単な世界ではありませんが、最初の結果だけで「自分には無理だ」と決めてしまうのは、もったいないと思います。
声の仕事で大切なのは「いい声」だけではない

石塚さん声優やナレーターというと、やはり「いい声じゃないと無理」と思ってしまう方も多いと思います。
畑さんそこはよく言われますね。ただ、個人的には「いい声」だけで決まるものではないと思っています。
石塚さん生まれつきの声だけが大事ではない、ということですか?
畑さんはい。大切なのは、ちゃんと声が出せているかどうかです。その上で、その人が持っている声の色が作品に合っているかが大事だと思います。
石塚さんなるほど。まずは、マイクに乗る声を出せるかどうかなんですね。
畑さんそうですね。僕自身も、10代の頃は声をあまり出していませんでしたし、自分の声がどういう声なのかも分かっていませんでした。
石塚さん今の畑さんの声を聞くと、最初からそうだったように感じてしまいます。
畑さんでも、始めたばかりの頃の声を聞いても、多くの人が「いい声」とは思わなかったと思います。発声ができていなかったからです。
石塚さんつまり、「声が良いかどうか」よりも、声の出し方を学ぶことが重要なんですね。
畑さんはい。前に出ていない声や、こもってしまう声も、練習で変わる部分があります。まずは自分の今の状態を知ることが大切です。
石塚さんYouVoice Academyでも、そうした基礎から学べる形にしているんですね。
畑さんそうです。未経験の方でも、自分の声を知り、必要な練習を積み重ねていけるようにしています。声の仕事を特別な人だけのものにしないためにも、基礎はとても大切だと思っています。
パート2へ続く:畑さんは、どうやって声の仕事を「仕事」にしていったのか
養成所で悔しさを味わいながらも、少しずつ役をもらえるようになった畑さん。
しかし、この時点ではまだ、声の仕事だけで生活できる状態ではありませんでした。
むしろ、その後の道のりは簡単ではありません。
自宅で収録し、自分で営業し、少しずつ実績を積み上げていく日々。
最初に受けた案件の報酬は、決して大きなものではありませんでした。
それでも畑さんは、声の仕事を諦めずに続けていきます。
では、畑さんはどのようにして、声の仕事を「続けられる仕事」にしていったのでしょうか。
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